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 新たなるゆとりの空間ー地下室
 

 地下室は平成6年6月29日より施行されました建築基準法の一部改正で「容積率不算入」となり、それ以来、静かなブームが続いています。土地の有効活用を促す観点から「容積率不算入」は画期的なものでした。特に都市部においては、狭少地をいかに広く活用するか、ということから考えれば、地下室を造らない事自体がおかしなことであるとまで、あえて極論するものです。
「容積率不算入」とは、「住宅の地下室の床面積は、当該建築物の住宅の用途に供する部分の床面積の合計の3分の1を限度として、延べ面積に算入しないこととする」ということです。そこで、地下室をテーマに、Q&A形式で記述を致します。

Q1.地下室の「容積率不算入」について詳しく説明して下さい。
A.建築出来る住宅の面積は、容積率の上限が定められているため制限がありす。しかし、住宅として利用される地下室を設けるのであれば、住宅の規模をさらに大きくすることが出来る様になりました。
これは、すでに建築された住宅についても適用れますので、増築を地下室で対応することが出来ます。例えば、容積率が100%と指示されている地域では住宅を建築する場合、敷地面積が100あれば従来は100までしか建築出来ませんでしたが、これからは、地下室50を含めて150までの建築が可能となったわけです。

Q2.居室を地下に設けたいのですが、「容積率不算入」のほかに守るべき基準はありますか。
A. 居室を地階に設けることは、衛生上の配慮から原則として禁止されていますが、居室の前に「からぼり」がある場合、その他衛生上支障がない場合には建築が認められています。居室を地階に設ける場合は、必要な「からぼり」の形状や大きさ等衛生上の守るべき基準が国交省より示されています。
又、地階の居室については、換気、内装、排煙等の建築基準法の規定による居住環境の確保、並びに日常の安全性、並びに防災、防火及び避難の安全性の確保等に対しても配慮が必要です。但し、地階が倉庫、物置等の目的ですと「からぼり」の必要はありません。

Q3.一部屋増築したいのですが、既存の住宅でも自由に地下室はつくれるのですか。
A. 地下室の「容積率不算入」は、新築のみではなく既存の住宅についても適用されます。したがって、新たに地下室を増築する場合、増築可能な床面積の上限は従来より広いものになります。
例えば容積率100%、敷地面積100の場合、現在1階、2階の床面積が各々40、合計80の場合、これまでは地上もしくは地下に20が増築可能でありますが、これからは地上20、地下50が増築可能となります。

Q4.いま住んでいる住宅の真下に地下室をつくる場合、住んだままでさしつかえないでしょうか。
A. まず不可能であると考えて下さい。それにコスト面で大変な問題があろうかと思います。
例えば車寄せとか、車庫等があれば、その場所に地下室を造ることは可能です。しかし、これも施工方法、安全性等をよくよく考える必要があります。

Q5.地下室をつくる工事期間はどれくらいかかるのでしょうか。
A. 私共の場合は現場での鉄筋コンクリート造りです。躯体工事のみで約4〜6週間位かかります。内装工事、設備工事などに2週間位かかります。一方、工場で生産された地下室をセットする方法ですと、期間は著しく短縮されますが、価格面ではむしろ高額となりますので、私共では採用しておりません。
ただし、工事期間は敷地が狭かったり、地下水位が高かったりすると工事が困難になり、その分工期が長くなることがあります。

Q6.地下室の工事となると重機等の搬入、搬出等で道路との関係ではどの程度の道路幅が必要でしょうか。又、隣地境界との関係はどんなものでしょうか。
A. 道路は重機の搬入、搬出の為、幅員4mもあれば大丈夫です。又、隣地境界の関係では、通常の地上の建物が建つ範囲であれば、地下室の工事は可能です。
尚、土地の大きさの関係上、隣地に接近して地下室を造る場合には、地崩れがおきない様、山留工事をするのは基本的なことです。

Q7.隣地の方にはどう説明し、どの様な対策をとったらいいでしょうか。
A. 隣地或いはご近所の方は、主に地盤沈下と騒音を心配されるかと思います。地下を深く掘りますので(約4m位)、地盤沈下するのではないかと不安を持つ方がおられると思いますが、前回記述した様に、地崩れ、地盤沈下を防ぐ安全対策の技術は大変進んでいますので、その工法をていねいにご説明すれば、ご理解願えると思います。
又、騒音につきましては、地下のない工事でも、ある程度の騒音は発生しますが、地下室工事の場合には工期が長期化しますので、あらかじめ工事予定期間及び工事時間をご説明し、ご理解を求められる事が大切です。

Q8.地下室を造る場合の標準的な費用はどの位かかりますか。又、条件によって、どんな場合に高くなり、どんな場合なら安くなるのでしょうか。
A. 私共が今まで造ってきた地下室は、殆どがいわゆる「からぼり」のない、収納型の地下室ですが、鉄筋コンクリート造りで表わしの状態で、標準的には坪当り70万円位です。決して費用的には高いものではありません。
とにかく土地代は0なのですから。しかし、地下室を造るには、本体工事のほかに「地面を掘る」、「地中水が室内に浸入しない様に防水する」など地下室特有の費用が余分にかかります。
又、この費用は建設地の条件によって高くなったり、安くなったりします。例えば、前面道路の幅員が広く、敷地が広ければ、大型の重機を使って効率よく作業ができ費用は安くなります。
しかし、地盤が軟弱だったり、地下水位が高いと、地盤補強や山留め、地下水の処理などが必要となり、当然その費用がかさみます。又、掘った土を敷地内でうまく利用できれば費用はかかりませんが、残土処理場まで運べば、距離が遠くなるほど費用は高くなります。一方、構造面からいえば、地下室の平面・断面形状をシンプルにするのも費用を安くする重要なポイントです。又、半地下タイプは通常よりも安くなる場合が多いようです。

Q9.地下室にはいろいろなタイプがあるそうですが、主なものについてメリット、デメリットを教えて下さい。
A. 住宅の地下室は大きく分けて「外気開放型」と「密閉型」の2つがあります。外気開放型は地下室の壁の一部に「からぼり」や「中庭」を設けたり、斜面を利用して外気に面しているものを指します。
換気や採光が行いやすく、風が通り抜け、居室として使うのには快適ですが、敷地が斜面であるか、もしくは「からぼり」を造る広さが必要です。密閉型は敷地の形や広さによる制限は地下室を建物の下部に設ける限り受けませんが、換気や採光を行うのが難しいので、居室として使うには十分な対策が必要です。最近、採光の為の商品が開発され、採光は可能になりました。

Q10.居室としての地下室のメリットはどんなことですか。
A. 地下室では地上の部屋では満たされない住空間が得られます。照明の面から見ますと、人工照明のみとなりますのでいろいろな演出が可能となります。又、音についても地上の騒音が届きにくく、地上へ音が出にくい構造があることは云うまでもありません。それ故に、オーディオルームやホームシアター或いは音楽スタジオ等遮音、防音効果は抜群です。
地下室は温度の変化が年間を通じて安定しています。湿度については除湿機の設置で安定して湿度を保つことが出来ます。それ故に、地上の部屋よりむしろ快適です。地下室の室温の恒常化の為、とくに、冷房の面では地上の部屋より地下室の方が消費エネルギーが少なく効率的です。年間を通して消費エネルギー全体を試算し、比較すると、地下室と地上の室との間には顕著な差が見受けられません。
試算項目
地下室 地上部屋
照 明
394
219
換 気
164
0
除 湿
383
0
冷 房
83
752
暖 房
1874
1755
合 計
2989
2726
消費エネルギー試算(年間:kwh)
完全地下の地下室と地上の建築物(RC造)を比較、床面積20、東京における気象条件。

Q11.地上での居室に比べて、地下室には特別の設備機器類や特別の工事が必要になることはありませんか。
A. 地下室は断熱、遮音、防音、省エネなどに優れた特性を持っていますが、地上の室に比べて換気、採光、通風、防災などについては工夫が必要です。
特に居室を設けた場合には、採光の為の開口部、換気の為の空調設備、除湿の為の除湿機や住宅用簡易火災報知器などの設備機器などが必要です。

Q12.地下室といいますと、ジメジメした暗いイメージがあるのですが、湿気などは大丈夫なのでしょうか。
A. 工夫と対応次第で湿気は防げます。その対策としては「からぼり」を設けたり、天窓を設けたりして屋外と直接接する部分をつくり、地上の部屋の状態に近づけることです。
こうすれば太陽光も入り、窓を開放することで換気がしやすくなります。これらの方法が取れない場合でも、照明器具を考えたり、空調機器や除湿機を設けることによって快適な空間を確保することは出来ます。又、水蒸気の発生しやすい暖房機器の使用を避けるなど、地下室での住まい方への配慮も必要です。

Q13.地下室の採光、通風、換気は十分に出来るのでしょうか。
A. この質問は前回と重複致しますが、重ねて記述します。設計段階で気をつければ大丈夫です。例えば「からぼり」を設けたり、天窓を設ける場合は、窓の大きさを十分にとり、採光、通風、換気に努めることが必要です。
又、窓からの自然の採光が利用出来ない場合でも、地下室内で行われる読書や運動に必要な明るさに応じた照明器具を計画的に設置すれば解決します。いずれにしても、設計者とハードな面と、住まい方の面をよく話し合って決めれば問題は生じないと思います。

Q14.地下室居住は健康面でまったく問題はないのでしょうか。注意するとすればどの様なことでしょうか。
A. 通風、換気や断熱を十分考慮した設計施工を行えば大丈夫です。しかし、それでも、地下室の使い方によっては結露し、カビを発生させてしまうことがありえます。
通風を妨げるような場所に物を置かない、煮炊きなど水蒸気が発生する作業後や、喫煙後には換気を十分に行うなどに注意すべきでしょう。長期間留守をし、地下室を使用しない場合もその間の換気については対策を講じるべきです。又、地下空間や閉鎖的な小空間に精神的圧迫感を感じる人もいるかと思いますが、「からぼり」など屋外に直接つながる部分がある地下室であれば、精神的圧迫感は随分違うものと思います。

Q15.地震で地下室が崩れる心配はありませんか。
A. 地下室には「からぼりタイプ」、「傾斜地タイプ」、「密閉タイプ」等いろいろな形態があります。「密閉タイプ」の様にまわりが全て土に接している場合は、地上の建物の様にゆさぶられることはありませんので心配ありません。
しかし、傾斜地タイプの様に一方に大きな窓がある場合や、一方に開口部が集中している場合等には、建物にネジレやスベリ現象が起きることがありますので、強度に対して配慮して設計を行う必要があります。
地下室を造るにあたっては、事前に地盤状態の調査、検討を十分に行っておく必要があります。

Q16.集中豪雨や台風のとき、地下室は結露しやすいと云われていますが‥
A. 雨の多い季節、地面は大量の水を吸いますので、地下にある部屋は水浸しになるのではないかと心配になりますが、防水対策がしっかりしたものであれば大丈夫です。
結露の発生を防ぐ方策をきっちりすれば心配はいりません。このQ&Aでも何回も記述しておりますが、空調機器、除湿器、風通しなど或いは開放型のストーブなどを使用を避ける様、常に考慮すれば心配はいりません。

Q17.長雨などで地下水位が上り、漏水するようなことはありませんか。
A. 十分に対策を施してあれば大丈夫です。しかしながら、地下室の壁や床からの漏水対策には、漏水を起こさない為の対策と、万一、漏水した場合の対策を検討する必要があります。漏水を起こさないためには、施工前に土質や地下水位の位置などの調査を十分に行い、地下室の外周壁や床に防水対策を施すことが重要になります。
防水対策は、一般的には、建物の外に防水対策を施す外防水工法が採用されますが、それ以外にも内防水工法や建物自体の防水効果を高める躯体防水工法などがあります。地下室の工法や敷地の条件に応じて、的確なものを選択すれば心配はありません。ただし、万一の場合を想定して、集水桝を設けておくと良いでしょう。

Q18火災時などの避難面の対策はどのようになっているのでしょうか。
A. 地上階と違って直接外部との接点が少ない地下では、災害時の避難対策として、まず2方向避難を確保する必要があります。従って、避難、排煙に有効な直接外気に接する開口部を設けるか、それに代わるものが必要です。又、地下室での火災の早期発見の為の簡易火災報知器の設置、内装やドアを不燃材料で仕上げる、或いは、初期消火の為の消火設備の設置等は標準的な仕様です。
以上18回にわたって連載しました内容は、財団法人ベターリビングの「地下室生活新時代」を参照に致しました。